有川 浩「阪急電車 (幻冬舎文庫)」

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集。

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。

:(269page):アマゾン紹介より引用

感想

 期待して読んで、期待通り面白かった!
 やっぱこの人はすごいや。なんでこんなに外れがないんだろ。
 
 阪急今津線での、それぞれの駅(というか区間)でのエピソードで構成された群像劇。
 
 有川浩さんっつーことで、ほっこり恋愛モノ要素も多分にあります。
 分かりやすくて鋭い(時々ドキっとする)人物描写もいつもどおり。テンポの良い関西弁の会話もとても楽しい。
 エンタメエンタメしてて、肩肘はらずにすっと読める、とてもいい本でした。
 
 イージーに読めるので活字慣れしてない人にもオススメできます。
 有川浩さんはインタビューで、「大人向けのライトノベル」が書きたい、
っていう趣旨のことをおっしゃってたけれど、
まさにその通り!って感じの作品でした。
 
 この本の児玉清さんの解説で、すごく腑に落ちた箇所があった。
 有川浩さんの作品には「まっとうな」とでも表現するべき、正しさが背後に流れている、というところ。
 
 確かに、この人の作品には、「空の中」なら未確認飛行物体とのコンタクトの取り方だったり、「図書館戦争」なら創作活動への検閲への抵抗であったりと、それぞれ特殊な状況下で、「まっとうであること」の大切さや格好良さを描いているように見える。
 この「まっとう」が、厳しくも人情にあふれたもので、またそれがいいんだよなー。
 単純にエンタメエンタメしてる、ってだけじゃなく、そういう魅力もあるのが憎い。
 
 たぶん、新作が出るたびに、期待とともにレジに持って行くんだろうなー、俺。そしてたぶん、その期待通りか、それ以上に楽しませてもらえると思う。
 そう思える作家さんがいる、ってだけで本屋に通う楽しみも増えるってもの。