福岡 伸一「生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)」

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生きているとはどういうことか―謎を解くカギはジグソーパズルにある!?分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色をガラリと変える。

:(286page):アマゾン紹介より引用

感想

 「我々の体は、維持するために壊し続けなければならない。それはなぜか」
 「原子に比べ、我々の体がこれほど大きいのはなぜか」
 「ノックアウトマウスがマトモに生活できる場合があるのはなぜか」
 などなど、興味深い内容をわかりやすく説明してくれています。
 
 生きている、ということはとても不思議で、面白い現象なのだなぁ、と
 改めて実感させてもらいました。
 
 単純に知ることって楽しいよね、と思わせてくれます。
 また、DNA発見にまつわる、科学者同士での競争は、
 下手なサスペンス小説よりもスリリング。
 知識欲も満たせ、ドキドキもさせてくれる良書でした。
 生命科学に興味がある人にはすごくオススメ!

生きているということはどういうこと?

 生物の条件は「自己複製する能力を持つこと」である、とはよく言われますが、
 この本での定義は異なります。(そこがこの本で、一番楽しかった!)

 生物とは「動的な平衡状態」にある流れである(P.167)

 動的な平衡状態って何よ、ということなのですが、そのたとえもまた素敵。
 
 崩れ続ける海辺の砂の城と、その砂の城を補修し続ける”何か”。
 元々ある砂が崩れて、新しい砂を付け加えることを繰り返すことにより、
 砂の城は、1年もすれば砂単位では「別物」になっているわけです。
 しかし、1年経ってもひと目で見て「砂の城」である状態を維持している。
 そういう、
 「砂の城それ自体」と、
 「砂の城を補修し続ける何か」の総体こそが生命なのだ、という説明は、
 すごくしっくりときました。
 
 大昔の哲学者の「万物は流転する」という言葉や、
 仏教の輪廻のような考えだと思いました。
 万物は流転し、生命もまた、その中の一つの流れである、という感じで。