高橋ナツコ「東京マグニチュード8.0」

本屋で平積み + このタイトルから、
非常事態シミュもの、パニックもの良作を期待して購入。 
 
最初のページを見た瞬間悟る。
 
「これはそういう類の話じゃねぇ!」
 
章ごとになんか挿絵が入ってるし、
どうもアニメ作品のノベライズらしい。
 
・・・タイトル買いをしてここまでズレたのは初めてだw
 
帯もそれっぽいんですよねえ、、。

 (東京マグニチュード8.0帯より)
 大地震の恐怖を圧倒的なスケールで描く、
 感動のリアルシミュレーション小説。
 首都・東京。30年以内にマグニチュード7以上の
 大地震がおきる確立、
 70%以上。

 
 

ざっくり感想

大震災にあった姉弟の家族の情話、って感じであり、
そういう路線として読めば結構面白い。
 
これはあんまり安易じゃないですか、
という展開がちょこっとあったり、
弟君いい子すぎだったりと、
ちょいと違和感はあるけれども。
 
俺は家族系のネタには非常に弱いので、
ちょっとグっときてしまったw。
 
でも、正直小説として、
「小説単体」で万人にお勧め!って感じじゃないかな、、。
原作を見た人向けだと思った。

多分、原作を見た人なら何倍も楽しめるだろうと思う。
(俺は見てないから、とても残念だ)
 
登場人物の 内面の描写がとても丁寧だったから、
おそらく原作の補完的な意味合いがあるのだと予想。
自分は小説のみだったので、
ちょっとクドく感じてしまいました。
 

作者について

ライトな文体なのに、時々ドキリ、とするシーンもあって、
この作者やりおるわ!と感じました。 
 
なんというか、とても誠実な感じのする文章。
まっとうに、わかりやすく書こうとする意思みたいなのを感じます。
 
っつーか人物描写結構すごいのに、
文章が比較的普通なのに対して違和感。
 
でも、大型新人、、、って感じじゃなくって、
数を書いたプロって感じがする、、。
ぜんぜん粗くねーんだもん、、。
 
いったいどういうことなんだ!と思ってぐぐってみたら
この作者さん結構大物の脚本家だった。
ああー、、。そういうことかー。
 

被災者の描写について

 
妙に、震災自体よりも、「震災にあった人」の描写が生々しいのにはちょっと驚いた。
 
作中に、孫を失いつつもボランティアとして働くおじいさんが出てくるのですが、
このおじいさんの存在感が半端ない。
 
おそらくは綿密な取材の成果だと思うのですが、
被災者の描写があまりに生々しい箇所があって、
ドキリとするシーンがあります。

トリップ

この話を読んでいて、自分が阪神の震災があった頃に感じたことを思い出した。
 
ものすごくピンポイントなんですがw、
当時の担任の、いつも明るくってひょうきんな先生が
被害が大きかった地区では教室が死体置き場になっていたことを
「悪夢のようです」
と真顔で(しかも標準語で)言っていたときの感覚。
 
ものすげえ非現実的などこよここは!?な異界にでも迷い込んだような困惑と、ちょっぴりの恐怖(だって現実感ないんだもん)。
 
子どものときの感覚って、
今からすると夢の記憶みたいに曖昧だけど、
いろんなことを今よりもはるかに鮮やかに感じていた、、んだと思う。
  
その感覚の一欠けらを思い出せたのは、
個人的に結構大きな収穫だったかも。