桜庭 一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)」

ある午後、あたしはひたすら山を登っていた。そこにあるはずの、あってほしくない「あるもの」に出逢うために--子供という絶望の季節を生き延びようとあがく魂を描く、直木賞作家の初期傑作。

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

:(201page):アマゾン紹介より引用

感想

なんか甘ったるい小説よみてーなー、お、コレ表紙も味あるしいいじゃん!
薄いしすぐ読めそう!
と手を出しました。
 
全く甘ったるくはないです 笑
そして、へこんでいるときに読むべきではない 笑!
超ヘビーですこの本。
文体がさっぱりしてるから生々しさは然程ないとはいえ、
結構つらい場面はありました。(主に暴力の描写で)
 
 
子どもの頃、経済的な問題などの「大人の問題」に対して、
無力であることにやるせなさを感じたことがある人なら、
きっとどこかに引っかかるはず。
 
この本は、その類の「やるせなさ」をひたすら冷徹に抉ってくれます。
 
作中での大人としてある挫折を味わった先生がいるのですが、
大人(初心者マーク付き)の自分としては、この先生に一気に感情移入をしてしまいました。
 
「大人になったら、〇〇だってできるつもりだったんだ」、
という悲痛な言葉。
その後、ただひたすら胸に刻んで必死に生きていく、
という姿に悲しさと希望を感じる。
そして、共感と、その強さへの羨望も。
 
 
ラスト一文があまりにも力強くって、切なくって。
あの一文程、この話をシメるのにふさわしい言葉はないと思います。
とても悲しい話でしたが、とても綺麗な終わり方でした。
 
好き嫌いはある話だとは思いますが、俺は大好きです。