有川浩「クジラの彼」

考えずに読める有川浩のこってこて自衛隊恋愛モノ短編集。
自衛隊にガッツり取材して書かれたらしく、「自衛隊で働く人たち」の恋愛以外の価値観・行動倫理なんかもとても印象的です。
 
海の底・空の中の登場人物のその後を描いた短編が3つありますが、読んでいなくとも楽しめます。個人的には空の中の土佐弁カップルを描いてほしかったですが、自衛隊じゃないですからね彼ら。ちょいと残念。
個別作品の感想。

クジラの彼

「海の底」の冬原のその後。
いつ帰港するかもわからず、一度出航すれば2〜3ヶ月は会えないのがザラの潜水艦乗りと恋愛する、というのがどういうことか。
真正面からしっかり描いていて、しかもとても面白い。
海の底を読まずとも、とても楽しく読めます。
 

有能な彼女

「海の底」の夏木のその後。
"女性上位"ラブストーリー、との触れ込みでしたが、まさにそのとおりの尻にしかれっぱな夏木の様が実に面白い。
 

ファイターパイロットの君

空の中のあの人らの6年後。
いや、激甘すぎですよこれ。おそらく有川浩の作品の中でも一番の甘っぷりかもしれん。
 
一言で言うならば、
ツンデレ」かくあるべし
なんという破壊力か。外で読んだっつーのににやけるところでしたよ。あぶねえ。

国防レンアイ

ロールアウト

最初から最後までwトイレ話。
自衛隊員のトイレ事情は知らなかったけれど、かなりつらそう。男女問わず、布切れ一枚でさえぎられ、その布の向こうには同僚がいる中で用を足す、って、つらいよなぁ・・・・・・。
 
男性の小便してる時は見られても大丈夫だけど大便は無理、というメンタリティーが女性には違和感がある、というシーンが印象的でした。
男からすると、そりゃそうだよ!って感じなんですけどねー。

脱柵エレジー

遠距離恋愛中の恋人のために、隊から脱走(脱柵)する隊員を上司が自分の体験談を元に諭す話。
遠距離恋愛破局の推移が途中描かれるのですが、男性・女性の心理がえらくリアルに描かれており、一回でも失敗したことのある人間なら昔の青臭い自分を思い出して頭をかきむしりたくなること請け合い。
後、脱走した隊員の捜索のえげつなさはまさに衝撃。
考えうる全ての交通機関を張り込み、主要幹線道路にはヒッチハイクを考慮して網を張り、近隣の駅・宿泊施設をしらみつぶしに捜索していく、というもの。
取材の元かかれたらしいですからこれはマジなのか・・・・・・。