有川浩「空の中」

 
有川浩の作品の中で、俺一番これが好きかもしんない。
めちゃくちゃ面白かった!

あらすじ

「国産」の航空機の試作機が四国沖上自衛隊演習空域で突如爆発、墜落した。原因は不明。
また、同空域で演習中のF15Jもまた爆発の後墜落。「空の中」には何があるのか。

 
メインキャラクターは、
・F15J爆発事故後、「あるもの」を拾った高校生
・F15Jの爆発事故に居合わせたパイロット
・国産航空機の試作機事故の調査にやってきたMHI("三津"菱重工)の技術者

物語は高校生と、パイロット・MHIの技術者の二つの視点から語られます。
名前は今手元にないので、うろ覚え。とりあえず固有名詞を出さず。
 
ジュブナイル的な高校生の成長物語と、「空の中」への技術者の奮闘というSF、二つのちょいと毛色の違った、物語を味わえます。
 
キャラクターの立ちっぷりはさすが。
 

川の神様

「高校生」側の登場人物の、土佐訛りあふれる爺さんこと川の神様。
この「川の神様」の魅力が半端じゃないです。朴訥で、正直で、物事の本質をやさしく静かに突くおじいさん。
彼の言葉はとても透明で、聞きやすくて、直接脳髄をぶん殴られるようにすっとはいってきます。
この人の発言は、深すぎて違和感があるくらい。こんなの書ける作者は化けもんだ、でもそれまで・その後の作品とあまりにも違いすぎね?と違和感感じてたくらいです。
別にこの作者をこき下ろしているわけではなく、むしろ大好きなのですが、それにしたって!というすごさだったのです。
どうもモデルの人がいるみたいで、ちょっと納得。
 

木っ端図化しい成分

これは恥ずかしい。勘弁してくれ。
終盤のあの「うつむき」は反則ですよねー。

高校生

高校生がある間違いを犯し、それを間違った方向で正当化し、償おうとしてしまった。

誰しも間違えることはあるのですが、「間違えてしまった」らどうしたらいいのか、どうすべきなのかを「川の神様」が語るシーンは一読の価値ありかなー、と。

技術者

いざというときの度量、そして牙をむいたときの獰猛な容赦のなさが印象的。っつーか格好ええ・・・!!

「国産航空機の開発」という、航空が好きな人にはたまらんテーマ。
国産航空機の開発にかける、技術者の熱意の描かれ方はものすっごく熱くて、やっぱりぐっと来る。