読書記録 「SとM」

ここんとこ暇さえあれば本を読んでます。近所の貸本屋ではマンガを、生活費削って新書を買ってぼちぼちと。
 
 
新書でここ一ヶ月で一番のあたりは幻冬舎新書の「SとM」。
Sなるもの、Mなるものはノーマル(とされる)な性行為からどのような歴史をへて分節化されて来たのか、そして現代でのその意味はいったい何なのか、という話です。
つまりがSとMって何よ?という話なのですが、その歴史的な成り立ちからしてとても知的好奇心がそそられます。
 
性文化の歴史は、学校ではなかなか教えませんけれど、人間の三大欲求の一つからくる文化なのですからそれぞれの時代の常識というか、生活の空気みたいなものが色濃く影響しているものだと思うんです。
しかも、普段は性ってのはどの国でも大抵「隠されている」ものじゃないですか。そういう「隠されている」部分こそ、当時の考え方の基盤の根幹がある気がするんですよね。 
例えばこの本で説明されている内容から紹介すると、西洋でのSMはキリスト教的価値観が色濃く影響していたり、日本のSMでは日本は日本独自特殊な民族性(所謂恥の文化)がにも表れていたり、などですね。
西洋は拘束具に皮を使って、日本ではなぜ縄なのか。些細な差ですが、それらの違いには「背景」があって、その背景を作り出しているのは日本人には日本人の、西洋には西洋の価値観な訳です(地理的条件もありますが)。
 
このように、SとMという切り口からその背景の文化や人間を分析していくのはとても興味深いです。そういうのが好きな人にはとてもお勧め。
 
あ、後、SM愛好家に聞くSMとは何か、みたいな話も載っていて、今までSMに抱いていた疑問(偏見)がガンガン溶けていきます。
例えばSMはただ人をいたぶる(られる)趣味ではなく、SMはMのして欲しいことをSがその通りに行う一種のロールプレイなのだそう。 
でも一般にSMは、これとは逆に扱われていますよね。Sに振り回されるM、Mはその状態がいい、みたいな感じで。SM愛好家からすれば大誤解だそうです。Mに振り回されるSというのが本質としては近いのだと。
 
それらの話を元にした源氏物語・少女漫画は非常にM的だ、という論考などもあったりして非常に興味深いです。かいつまんでいえば「格好よくて優しくてちょっと野蛮な自分に都合のいい理想のS男性」とM女性の物語、と読み替えることが可能、ということなのですが。いわれてみればそんな話が多いような気もしますね。覇王愛人とか(よりにもよってそれか)