森 薫 『エマ』
いわゆる身分違い(ジェントリ階級と使用人)の恋愛モノなんだけど、
イギリス愛が詰まってて面白かったな。
皮肉っぽい紳士とか、いかにもな老執事とかいかにもイギリス!って感じで(偏見?)
この本はメイドに目覚めさせる効果を持つ、
というレビュー(アマゾンだったかな)を読んだことがあったので、
この年でメイド最高っす!とかなったらどうしようかと思っていましたが、
そんな効果はありませんでした。
ただ、照れ屋+眼鏡+ショートカットの落ち着いた女性はいいものだ、と思いました。もともと好きだけどな!
以下ネタバレっつーか怒りの捌け口。
ウィリアムざっけんな! エレノアがあまりに気の毒すぎて、後の展開素直に楽しめんかったわ!
エマとの婚姻を、身分の差を原因として周りから猛反対された上、
相手のエマが失踪した、ということで、傷心に浸るウィリアム。
それだけならいいのですけれど、ウィリアムは
「保守的な価値観の体現者と世間に認められるようになった後、死ぬ寸前にそれらを否定してやる」
というちょっとアレな復讐?を行おうとするんですよ。
保守的な身分制こそがウィリアムとエマの仲を許さなかったわけですから、
復讐の対象としては間違ってはいませんが、かなり屈折してますよね。
もちろん、エマが失踪したため、「エマとの関係を続け正面から身分制度に向き合う」って手段が取れない、ということが理由にあったのだとは思います。
内に復讐心を秘め、社交界・実業にまい進するウィリアムは、その保守的な行動の一環として、子爵の次女エレノアにそそくさとプロポーズをしてしまう。
エレノアはもともとウィリアムにベタ惚れもいいところでしたから、ものすごく幸せそうに受け入れる。
と、まあ、そこまではまだいいんだけど、エマの行方がわかるや否や手のひら返して一方的に婚約破棄を突きつけ、自分はエマの方に目行きっぱなしってのはちょっと。。
「婚約破棄します、ごめんなさい」
って伝えただけですからねウィリアム。。
何か、もっとなかったのか、と思ってしまう。
保守的な身分制そのものに、エマと一緒に立ち向かう、ってのは、物語として正道だと思いますし、そうなるのだろうな、とは思っていました。
ただ、あまりにエレノアが不憫すぎる。
婚約破棄の後、困難に立ち向かいつつも実に幸せそうなウィリアムとエマが描かれるのですが、その反面エレノアは食事は取れんわ引きこもるわでもう散々。
エマとウィリアムが幸せに、ってのは大歓迎ですけど。
ちょっとひっかかっちゃうなぁ。